制度の概要
固定資産税の住宅用地の特例とは賦課期日(1月1日)に住宅の敷地となっている土地(住宅用地)に建物が建っている場合には、住宅用地に対する課税標準の特例措置にで、固定資産税・都市計画税が6分の1に軽減されます。
通常、固定資産税は1月1日の現況で判断されるため、1月1日時点で更地や建物が建築中の状態では上記の軽減の特例は受けられません。
ですので、1月1日時点で、既存の住宅を取り壊して住宅を新築中の土地や建替え予定の土地には、原則としてこの特例は適用されません。
しかし、東京23区をはじめとする一部の市区町村では一定の要件を満たすことで、申告により住宅用地の特例が継続して適用されます。
特例要件(東京23区の場合)
特例要件は市区町村によって若干変わりますが、概ね下記のような要件であることが多いです。
一例として東京23区の要件は次の①~④の全てに該当することとされています。
①当該年度の前年度に係る賦課期日(1月1日)において住宅用地である。
②当該年度に係る賦課期日において、住宅の新築工事に着手している。
(または、建築主事または指定確認検査機関が住宅の新築に関する確認申請書を、当該年度に係る賦課期日までに受領していることが、受領印等により確認でき、かつ、当該年度に係る賦課期日後の3月末日までに住宅の新築工事に着手している。なお、事前審査のための確認申請書の提出は該当しない。)
③住宅の建替えが、当該年度の前年度に係る賦課期日における建替え前の住宅の敷地と同一の敷地において行われている。
(ただし、特例が適用される土地の範囲は建替え前の住宅の敷地を限度とする。)
④住宅の建替えが、当該年度の前年度に係る賦課期日における建替え前の住宅(家 屋)の所有者と同一の者により行われている。
つまり、
「前年の1月1日が住宅用地」で、「建て替え前と同じ敷地」で「建て替え前と同じ所有者」が「今年の1月1日に新築工事に着手(未着手でも建築確認が取れているなど、着工予定である)」していることで適用が受けられます。
手続き
「固定資産税の住宅用地等申告書」に必要事項をご記入の上、以下の書類を添えて、当該年度の1月 31 日までに、ご所有の土地が所在す る区の都税事務所土地係へ提出すること。
必要書類
◯建築確認申請書
◯建築確認済証(当該年度に係る賦課期日までに交付されている場合に限る)
◯中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例等に基づき行政庁に提出した書類
この3つのいずれかの写し
所有要件(東京23区の場合)
上記の要件で意外と難しいのが④の「所有要件」です。
昨今、節税対策の一環として法人成りしたり、子ども・孫名義の建物を建てるケースが多くありますが、その場合は「建て替え前と同一の所有者」ではなくなります。
この所有要件を少し詳しく見てみましょう。
・建替え前の住宅の所有者の親族(民法第725条)が住宅の建替えを行っている場合
・建替え前の住宅の所有者が法人であり、当該法人を合併した法人が住宅の建替えを 行っている場合
・建替え前の住宅の所有者の持分を含む共有者が住宅の建替えを行っている場合
・建替え前の住宅の所有者が当該年度に係る賦課期日における建築主との等価交換方式等によって住宅完成後直ちに住宅を取得する場合
・建替え前の家屋(補充)課税台帳登録者以外の実質の住宅の所有者が住宅の建替えを行っている場合
(参考)民法第725条
次に掲げる者は、親族とする。
1 六親等内の血族
2 配偶者
3 三親等内の姻族
ですので、所有者の親族はOKですが、Q&Aに「個人名義の建物を取り壊して法人名義の建物を新築した場合について」は
建替えを行った者が前年度に係る賦課期日における建替え前の住宅(家屋)の 所有者と別人格となるため、特例は適用されません。
とされており、法人名義で新築する場合は不可です。
売買で購入した場合
一番多いのは年の途中で売買で購入して、1月1日に建物が完成していない場合ですが、これは上記の所有要件を満たさない(建て替え前と建て替え後の所有者が別人)なので、この特例は受けられません。
活用方法
気になることがあったので、関東某区に聞いてみたところ、思わぬ方法で「それは特例を受けられます」と回答頂けた例もありました。
市区町村によって若干の対応・要件が異なることと、(ここでは書けませんが)ちょっとした工夫で意外に活用の幅が広げられる特例ですので、1月1日を建築中で迎えることになりそうな方はご検討頂きたい特例だと思います。
特にこの特例が受けられるかどうかで固定資産税が6倍変わるわけですから、活用しない手ははないと思います。
出来れば購入・建て替え前の段階から色々と計画するとスムーズに進むのとサポートできる内容も増えますので、もし気になる方はお早めにご相談下さい。